離婚は人生における大きな転機であり、財産分与は新たな生活を始める上で非常に重要なステップです。しかし、感情的な対立や知識不足から、本来得られるべき財産を十分に分け合えないケースも少なくありません。
そこで本記事では、離婚における財産分与で損をしないために、行政書士が押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します。法的な知識と手続きを理解し、後悔のない財産分与を実現しましょう。
1. 財産分与の基本を理解する
まず、財産分与とは何か、その基本的な考え方を理解することが大切です。

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財産分与とは
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産を、離婚する際に分け合うことです。これは、夫婦の共有財産を清算し、離婚後のそれぞれの生活を保障するための制度です。

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分与の対象となる財産(共有財産)
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成・維持された財産、いわゆる「共有財産」です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 現金・預貯金: 夫婦の口座にある預金、タンス預金など
- 不動産: 夫婦で購入した自宅、投資用物件など
- 自動車: 夫婦で使用していた自動車
- 有価証券: 株、投資信託、債券など
- 退職金・年金: 婚姻期間に対応する部分
- 保険: 解約返戻金のある生命保険など
- その他: 家具、家電、貴金属、慰謝料や養育費とは別に考慮される財産的価値のあるもの
注意点:
名義にとらわれない: 財産の名義が夫婦どちらか一方になっていても、婚姻期間中に夫婦の協力によって築き上げたものであれば、共有財産として分与の対象となります。
特有財産: 婚姻前から夫婦それぞれが所有していた財産や、相続・贈与によって得た財産は、原則として財産分与の対象にはなりません。
2. 財産分与で損をしないための重要ポイント
共有財産の範囲を正確に把握した上で、以下のポイントを押さえることで、不利な財産分与を避けることができます。

共有財産の正確な洗い出しと評価
まずは、夫婦の共有財産を漏れなくリストアップし、その正確な価値を把握することが重要です。通帳の記録、不動産の登記簿謄本、保険証書、有価証券の取引明細などを確認しましょう。
- 不動産の評価: 不動産は時価で評価する必要があります。不動産業者に査定を依頼したり、固定資産税評価額を参考にしたりする方法があります。
- 退職金の評価: 将来受け取れる退職金については、現時点での評価額を勤務先に確認する必要があります。
- 年金の分割: 離婚時の年金分割制度についても理解しておきましょう。

財産分与の割合について交渉する
共有財産の基本的な分与割合は、原則として夫婦それぞれ2分の1とされています。しかし、夫婦の協力度合いや貢献度によって、異なる割合で合意することも可能です。
- 専業主婦(夫)の貢献: 専業主婦(夫)であっても、家事や育児を通じて財産の維持・形成に貢献していると認められます。
- 特別な貢献: 一方が事業を成功させた、資格取得に貢献したなど、特別な貢献があった場合は、分与割合が考慮されることがあります。
相手方の主張を鵜呑みにせず、自身の貢献度をしっかりと主張することが大切です。

隠し財産に注意する
離婚協議の際、相手方が意図的に財産を隠しているケースがあります。以下のような点に注意し、不審な点があれば徹底的に調査しましょう。
- 名義の異なる口座: 配偶者名義の口座だけでなく、親族名義の口座なども確認する。
- 不動産の売却や名義変更: 離婚前に不自然な財産の移動がないか確認する。
- 高額な出費や不明な支出: 生活費に見合わない高額な出費がないか確認する。
必要に応じて、弁護士などの専門家に相談し、財産調査を依頼することも検討しましょう。

財産分与の方法を具体的に決める
- 現物分割: 不動産や自動車など、現物をそのまま分け合う方法。
- 代償分割: 一方が財産を取得する代わりに、もう一方に相当する金銭を支払う方法。
- 換価分割: 共有財産を売却し、その売却代金を分け合う方法。
将来的な紛争を避けるためにも、分割方法や支払い時期、支払い方法などを具体的に合意書に明記しましょう。

離婚協議書の作成と公正証書の活用
夫婦間で合意した財産分与の内容は、必ず書面に残しましょう。口約束だけでは、後々トラブルになる可能性があります。
- 離婚協議書: 夫婦間の合意内容を明確に記載した書面。
- 公正証書: 公証役場の公証人が作成する公的な文書で、高い証明力と執行力があります。特に、金銭の支払いに関する合意(慰謝料、養育費、財産分与の代償金など)については、公正証書を作成しておくことを強く推奨します。
公正証書を作成しておくことで、相手方が約束を守らない場合に、裁判手続きを経ずに強制執行が可能になる場合があります。
困ったときは専門家への相談を
分与は、法的な知識や交渉力が必要となる複雑な問題です。少しでも不安を感じたら、早めに専門家(弁護士、行政書士など)に相談することをおすすめします。
- 弁護士: 法的な代理人として、交渉や調停、訴訟などの手続きをサポートしてくれます。
- 行政書士: 離婚協議書の作成や、公正証書作成のサポートなどを行ってくれます。
専門家のサポートを受けることで、精神的な負担を軽減し、有利な条件で財産分与を進めることができるでしょう。
まとめ
財産分与で損をしないためには、共有財産の正確な把握、適切な分与割合の交渉、隠し財産への注意、具体的な分与方法の決定、そして合意内容を書面に残すことが重要です。
本記事が、あなたが後悔のない財産分与を実現するための一助となれば幸いです。もし不安や疑問がある場合は、一人で悩まずに専門家にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。具体的な財産分与の手続きや判断については、必ず専門家にご相談ください。
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。